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2012年2月 6日 (月)

『つぶれた帽子 佐藤忠良自伝』 佐藤忠良 (19)

■創作への親しみ

創作活動っておもしろそう。気の良いユニークな(お)じいさんが芸術と創作を身近にし
てくれる。うっかり粘土なんか買ってきちゃったりして。よし、私も今日から芸術家気分
だ。

芸術家と呼ばれる人が身近にいなかったせいか勝手なイメージがあった。ある種の天才、
エキセントリックな様、岡本太郎的な挙動が芸術家の標準で、どこか飛びぬけた特異な人
達だと思っていた。けれど、佐藤自伝のなにが良いってその普通さを明らかにしたところ。
彼らも私達となんら変わりがないということに気づかせてくれる。芸術家の、目立つ結果
ではなくその過程、こつこつとやっていく一歩一歩、手堅くしつこく、我慢我慢。私は芸
術家を結果であるその作品でしか見ていなかったのだ。だからその人が突然、特別の才能
を持っていたかのように錯覚してしまっていた。

芸術家は作品で表現するのだから仕方がないのだけれど、これって芸術へのハードルを不
当に高く見せていた所はあるんじゃないだろうか。突然現れた結果としての作品。洗練さ
れている。芸術家は嫌がるのかもしれないがスタートからゴールまでの道程にこそ、隠さ
れたもう一つの芸術的作品があるように思う。そういう意味でこの自伝は、見えなかった
部分の一端をチラリとさせてくれていて価値がある。

文は人なりで、人間的魅力、ユニークな雰囲気を感じる。解説のエピソードもまたおもし
ろい。減らず口で面倒くさそうなところも魅力である。この魅力は人に揉まれて生きてき
たからだろうか。小さいころから多くの人に囲まれて育ち、結果も出るから自信もある方
だったのだろう。多くの善意を受けながら生きていくところに羨ましさも感じる。人間の
関係性、環境が大事なのだと改めて思った。

彫刻とスケッチが結構な枚数入っている。白黒平面ではあるけれどこんなにじっくり彫刻
を見たことはなかった。美術館に行っても見方が良くわからないからわかる風を装って眺
めているだけだ。特に女性の裸の彫刻なんかはじっくり見ているのを見られているような
気がして足早で通り過ぎてしまう。この作品にも何点か入っていたので見ていたけれど、
こんなにグッとくるものだとは思っていなかった。私の女性に対する憧れなのだろうか。
技術的なものもあるのはわかるけれど、色々な感情が湧いてくる。彫刻って凄いかもしれ
ない。自意識過剰で見づらいのだけは何とかして欲しいけれど、朝一で美術館にでも行っ
てみようか。

★自伝評価
・オススメ :■■■□□
・役立ち   :■■■□□
・面白い   :■■■□□
・感動     :■■■□□

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