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2011年7月 6日 (水)

『これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝』 赤塚不二夫 (16)

■気持ちのよい生き方とは

肩肘張らず流れるように生きる。自然体。自慢もするし恥もかく。できる範囲で最大限楽しもうとする。楽しそうなことに対して素直に寄っていくところなどまるで食べ物にふらふら引き寄せられる子犬のようだ。かわいらしい人である。

生きることに対する自在さ柔らかさが目立つ、それはもちろん面白い。しかし赤塚の他人に対するあり方こそが最も面白い。場の関係性をよみ、時に頭をひねっていたずらをする。ばれて怒られ、殴られる。そんな時でも赤塚は相手が最後には笑って許してくれることを期待している。嫌われるまではしかたがない、けれど恨まれるということを赤塚はひどく恐れていた。もちろんその原因は満州時代に見た光景が深く関わっているわけだけれど、これは人間関係の要諦だと思って間違いない。赤塚は他人の感情、それも不快面には決して踏み込まなかったのではないだろうか。あるいは恨まれることを恐れる反動から人を喜ばせ、笑わせるといったギャグの世界へ進んでいったのかもしれない。

戦後生まれの私には赤塚自叙伝が歴史的史料のように感じられる。特務警察の息子で満州育ち、現代っ子にはどちらもまるで縁がない。だからこそなおさら興味深く読める。ぼんやりと知識として知っていたことが体験者によって語られる。しかも文章がまた抜群に上手い。繋がりとしての赤塚両親と赤塚個人の部分、構成もまた上手い。さすが漫画家、表現という点ではやはり一流だ。自伝の見本。自伝を書こうと思っている人は必ず目を通すべきだろう。自伝の書き方はこの1冊を繰り返し読めばわかってくると思う。

ギャグ漫画における自慢話、功績といったものはまったく触れられておらず、隠しておいてもいい事、話さなくてもいいであろう事の方があけすけに書かれてある。成功を掴むまで、その過程における親子の繋がり、自伝ではありながら親子伝的な感じにも受け取れる。

いい自伝です。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■■■
・面白い   :■■■■□
・感動     :■■■■□

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