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2011年6月13日 (月)

『名人に香車を引いた男 升田幸三自伝』 升田幸三 (9)

■息子を見る目

こんなにかわいい男もまあいない。目標に向かって進むさまは心配、実現していくところなどは痛快としかいえない。自分の筋は通すが変幻自在な柔軟さも持ち合わす。度胸もある。おっちょこちょいで調子にのりやすい。しかしなにより義理堅い。理想の息子像を体現している。いつのまにやら升田を見る目が親の目になっている。このバカ大丈夫か、大丈夫にきまっている幸三だもの、心配と痛快の繰り返し、両親や木見先生が羨ましくなるほどだ。

こんな人生もある。どうやったって叶うはずのない願いが叶う。自分の力だけではどうにもならにはずのことがとんとんと目の前に転がり込んでくる。もちろん手の届く所にいることは絶対で準備は万端だ。条件としては不利どころか不可能とみて間違いない。なかば幸三も諦めているはずだ。自分のがんばる方向、その延長線上に願いがあるというのがよかったのか。いくぶん皮肉なところもあるがそれでも願いは叶った、いつ叶うかはわからない、でも、こんなこともあるのだ。

勝負師の精神の在り方もおもしろい。特に夢を叶えるとき、その心境の変化から得られるものが勝負事における結論かもしれない。勝負事の世界で生きてきた幸三が最大の結果を残したときに考えられたものだし、なにより才能関係なく誰にでも実践できうるものだというのが素晴らしい。心境のあり方はまねられる可能性があるはず。少なくとも意識はできる。

GHQにブッくだりもまた楽しい。屁理屈だろ、それ、とも思わなくもないが気分はいい。豪快で愉快だ。実際こんなくだらないやり取りがいくつも行われ、わずかでも日本統治に影響があったのだとしたら、国を動かすのはいい加減でも十分、権力さえにぎれば適当なものなのだな。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■■□
・面白い   :■■■■■
・感動     :■■■□□

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