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2011年6月10日 (金)

『戸籍も本名もない男 アメリカで夢を摑んだ戦災孤児』 村上早人 (6)

■悲しい現実

こんなことがあっていいはずはない。想像するのがつらい。見たくないものを見せられるのはこんなに辛いのか。この本、章ごとに焦点を決めその周辺含め書いてある。20代前半までの出来事が主に書かれているのだが自分と比較することすらできない。圧倒的に違う。私が当然と思うものがなにひとつ当然ではないのだ。戸籍も本名もない男どころではない、何もない。あってもなくなる。ただ心に残るのみ。現実だとは思えない。部分でこうなのだから実際生きるハヤトが現実を直視できなくてもしかたがないはずだ。けれどハヤトは生きる。生きることが目的。生きて何をするかではない。生きることこそが目的なのだ。それで前に進む。今も虚無感にとらわれながら進んでいる。

集団としての戦争とその結果を引き受ける個人。これがひとつテーマなのかとも思う。けれど今を生きる私には想像することしかできない戦争よりも同じような構造で今辛い状況にいる人がいることのほうが想像させられる。きっといるはずなのだ。その人を助けることができなければ戦争があろうがなかろうが関係ない。むしろ戦争があったということが知られている分まだ彼らの方がましだということになる。しかしどうすればいいのか。私が少しでも気の持ちようで、といった解決策しかとりようがないのはわかっている。私と国には接点がないのだし、他人に影響を与えられるような状況でもない。今、きっといる
過酷な状況にいる人がたまたま私とすれ違った時具体的にできることをしてあげようと思う。9回は見てみぬふりでも1回は手を差し出せるように、そういう些細なことからでもはじめていくしかない。それがこの本を書いたハヤトの望みでもあるだろう。

これほどに過酷なハヤトが生きられたのも出会った人がいたからだ。けれどここまで過酷になったのも周りの人のせいだともいえる。積極的に関わるのは同じような境遇のしかも一部だけ、後は消極的に存在を無視するか積極的に悪意をむけるか。アメリカにわたってからもそれは変わらない。今も変わらないところをみるとこれが人間の集団の傾向なのだろうか。

和田の親分の励ましはいい。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■■□
・面白い   :■■■■□
・感動     :■■■■■

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