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2011年6月 8日 (水)

『奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝』 ヘレン・ケラー (5)

■学ぶことのすべて

風景描写がこの自伝には多い。物に対する手触り、匂い、暖かみの描写はわかる。しかし見ないとわからないような事が表現されている。三重苦のヘレンにこのような表現ができるのか。最後までいくらかの疑いは晴れなかったがヒントはあった。‘実はいまでも自分の考えと、本で得たものとの区別がきちんとつかない。これは、私が手にする印象の多くが、他人の目と耳を介するためだろう。‘なるほど、だからヘレンの描写するものは物語的なのだ。嘘のようによくできた描写も借り物だとすれば納得がいく。借り物の表現の継ぎ接ぎで彼女の外の世界は表現されているのだ。さて、だとすると疑問がわく。私達とヘレンの表現に違いがあるのだろうか。表現は同じでも表現しているものが違うことはあるだろう。けれど、表現する際の考え方は同じはずだ。手順は一緒のはずだ。表現の継ぎ接ぎなのだ。これが言葉の効果なのだと気づかされた。見えないヘレンと見える私達、着眼点の違いも面白い。

他の自伝にある自分自身の過剰な美化ともいえる部分がヘレンの場合には見える、分かることの過剰表現になっているのだろうか。三重苦な彼女の興味関心がそこに集まるのも当然ともいえる。

ヘレンの幼い頃のかわいらしさといったらない。アメリカにおける良い家柄の豊かな生活のなかで育つヘレン。三重苦だなどとはとても信じられないくらい元気なのだ。田舎、広い庭、暖炉、召使い、遊び相手、花にぬいぐるみと暖かい家族。そこで気持ちを伝えられないことにいらだちながらも元気に過ごす少女。こころ温まるというのはこういうことなのかと思ってしまう。愛情あふれる環境で育つヘレンを好きにならずにはいられない。

学ぶことについて分かることが非常に多い。説明するのは難しいのだが学ぶことの本質をこんなに捉えている本は今までみたことがない。学ぶことがヘレンの場合直接的に生きることと関係し、積極的に世界と相対することになるからだ。全文通して学ぶ意欲、意義、理由などその姿勢に気づかされることは多い。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■■□
・面白い   :■■■□□
・感動     :■■■□□

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