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2011年6月 7日 (火)

『自叙伝・日本脱出記』 大杉栄 (4)

■ナイーブさがエネルギーに変わる

自己分析ができないわけではない、ただ他者の分析が苦手なのだ。想像力が少し足らないのかもしれない。自分の行動からどんな結果が出てくるのか。その時にはわからない。自分の行動を振り返り、抑えられなかった動機も含めて分析される。しかし独り善がりなのだ。神近の分析もされる。しかし結果として刺されている。(解説によればこの自伝が出版された直後神近から事実の描写についての反論もでている。とすれば彼女に対する描写、分析は脚色が施されているのではないか。)どことなく芝居がかっていて、わずかな脚色が積み重なっているようにも感じる。

自伝からは豪快な大杉が想像される。しかしわずかに書かれるナイーブな自分という部分が彼の本質なのだろう。猫を残酷に殺したりする異常さが本質ではない。ナイーブさを覆うために無理をする、勇気があるように振る舞う、ナイーブな自分とありたい自分とのぶつかりから彼の行動はでているのではないか。初めて牢屋に入れられた時の描写が大杉の性格を特に表していると思う。

大杉のナイーブさはどこからくるのか。何かしらのコンプレックスが関わっていそうだがわからない。親との関係にヒントがありそうな気もするが想像の域をでない。

監獄の中の話は楽しい。捕まって拘束されている悲哀はあまり感じられず、気の合う仲間達とまるで寮で楽しく暮らしているようにさえ感じさせられる。勉強し労働し看守と賢くコミュニケーションし出た後の計画を練る。誰かが抜けても定期的に別の新しいメンバーが寮に入って来て新陳代謝もよさそうだ。現代なら外国人留学生まで入ってくるだろう。へたな寮外の人々よりもよほど充実して生きている。

日本を出る話もまた楽しい。ミステリのようなおもしろさがある。なにせ大杉は本物の国家を相手にしているのだから単純にみえる行動にもドキドキさせられる。尾行もつくし密航もする。国単位ではない、思想単位での同志とのありかたもおもしろい。日本人の同士ではなく中国、朝鮮、ヨーロッパの同士の方に共感したりする。時代を考えるとこういう関係もあったのかと思わされた。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■□□
・面白い   :■■■■□
・感動     :■■■□□

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