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2011年6月14日 (火)

『闇屋になりそこねた哲学者』 木田元 (10)

■武闘派哲学者

よく分からないことに対する憧れ、そんな単純なことが人生の大筋を決めてしまう。よく分からないということは見て見ぬ振りや反射的な拒絶をしてしまうほどにおそろしいものだ。その怖さの源泉、よくわからないということに憧れる。分からないことに取り組む自分に憧れているのかもしれない。少しミーハーな感じもする。

たとえば、自分の未来を想像するのは怖い、漠然としているけれど怖い。漠然としているから怖い。しかし木田はその怖さを平然と乗り越える。むしろより不安定になるかもしれないほうに賭けてみたりする。賢いといわれる行為がリスクを下げる選択をすることだとすれば、選択自体は無鉄砲極まりない。大筋の選択は単純、しかしその選択の後、自分のポジションをつくる能力に長けている感じがする。自分とその周囲だけは自力で作り出せてしまうような力がある。戦争直後自分の未来がどうなるかわからない、そんななかで生きてきたのが不安への対処となったのか。単純に腕っ節が自信の裏づけとなったのかもしれない。

やりたいことをやって生活するのは難しい。独りで決めてできることではないし、周りの人に恵まれなければできないことなのだけれど、木田は少し違う。受身ではないのだ。周りの人に恵まれるというよりも周りの人に恵ませる、といった感じがある。好き嫌いの個性がきついタイプなのだろうが好かせる、嫌わせると相手の感情は木田の思いのままなのではないかと思わせられる。木田の周辺だけが絶えず主体木田なのだ。判断する事柄に対して受身ではない、積極的であり続ける、スピード感すらある。周囲の世界と絶えず対面している感じ、飛びつくか受け流すかも他人まかせなところがない。リーダー的要素、司令等とでもいう要素が木田にはある。軟弱さの対極、頼りになる男だ。

有名な学者さんも他の分野からの方法論の転用を普通にするというのは少し意外だった。転用するというのが意外だったのではなくて、自分の頭から出てくることを考え続けるのではなく、キラッと光る考えにみんなで飛びつく。我先に、といった感じが意外だった。実用的かどうかということ以外は世の中一般とたいして違わないのだなと思った。結果が求められるという意味では良い事なのかもしれないけれど、哲学の世界でもそうだということに少し違和感を感じる。大転換だったり流行り廃りだったりなのかもしれないけれど。

★自伝評価
・オススメ :■■■■□
・役立ち   :■■■■□
・面白い   :■■■□□
・感動     :■■■□□

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